感情がコントロールできない原因と対処法|もっと心を楽にする方法

感情がコントロールできない原因と対処法|もっと心を楽にする方法

「すぐに感情的になってしまい、後悔ばかりしている」
「嫌な感情に振り回されて、気持ちが全然安定しない」

そんな時に「感情をコントロールしたい!」と考える人も多いのではないでしょうか?

ただ残念ながら、感情のコントロールは非常に難しく、すぐにできるようになるものではありません。

感情をある程度コントロールするには、感情への理解とトレーニングが必要で、時間がかかります。

とはいえ、カチンときた勢いで反射的に怒ったり、泣いたりするような「衝動的な感情」はコントロール可能です。この記事ではまず「衝動的な感情をコントロール方法」を3つご紹介します。

衝動的な感情をすぐにコントロールする3つの方法
①6秒間だけ耐える
②感情に点数をつける
③ストップと心でつぶやく

この3つの方法は、いわば応急処置です。繰り返すことで、衝動的な感情への耐性はつきます。

しかし、あなたが自分らしく生きるために感情をコントロールするには、以下の正しい知識が必要です。

感情をコントロールするために必要な知識
◎感情コントロールできない原因と対処法
◎感情の「本質」を理解する

この記事ではすぐに使えるテクニックから、ネガティブな感情をコントロールするための本質的な話まで丁寧に解説していきます。この記事を読み終える頃には、あなたは感情についての理解が深まり、「感情をコントロールするにはどうすべきか」が分かるはずです。

感情を理解すると、生きにくさから解放されるだけでなく、パワーを得ることもできます。ぜひ最後までご覧ください。

1.感情コントロールできないのはなぜ?病気なの?

感情コントロールできないのはなぜ?病気なの?

感情をコントロールできないと「もしかして病気なの?」と不安になることもあるでしょう。確かに感情のコントロールが効かなくなる病気もいくつかあります。

しかし「感情コントロールと病気が無関係」である方が圧倒的に多いのです。なぜでしょうか。詳しく解説していきます。

1-1.感情をコントロールするのは難しい

まず前提として理解して欲しいのが「感情コントロールはとても難しい」ということです。

特に怒りや悲しみといったネガティブな感情は抑えるのは非常に難しいとされています。これは人間の防衛本能による生理的な現象だからです。

本能をトレーニングや対策なしに何とかしようとするのは、武器を持たずに敵に向かって行くようなもの。無謀以外の何物でもありません。

プロのアスリート選手には、メンタルトレーナーがついていることが多いですよね。これは感情をコントロールして最大限のパフォーマンスを発揮するためです。裏を返せば、感情のコントロールは1人では難しいということが分かるでしょう。

1-2.感情と上手に付き合うことで生きやすくなる

では感情をコントロールするのは不可能で、私たちにはどうすることもできないのでしょうか?答えはNOです。

冒頭でもお話した通り、感情コントロールはトレーニングすることである程度できるようになります。

感情がコントロールできない原因を見つけ、適切に対処することで、多くの場合改善できるのです。

しかし感情をコントロールするといっても、感情を我慢したり、感情をなくしたりすることではありません。感情が大きく揺れる原因を知り、上手に付き合うことを目指します。

2.衝動的な感情をすぐにコントロールする3つの方法

衝動的な感情をすぐにコントロールする3つの方法

衝動的で強い感情は「一気に感情のピーク」に達するため、あらかじめ対処法を知っていないと対応できません。「カッとなって、怒鳴ってしまう」「叱責されて泣いてしまう」のは、このためです。

そんな我を忘れるほどの衝動的な感情に効果的なのが、次の3つの対処法です。

①6秒間だけ耐える
②感情に点数をつける
③ストップと心でつぶやく

3つとも知識さえあれば今すぐ実践できるものです。お守り代わりにに覚えておいてくださいね。

2-1.6秒間だけ耐える

瞬間的な怒りに効果的なのが、アンガーマネジメントの「6秒間だけ耐える」という対処法です。

怒りの感情は6秒でピークを越えるため、6秒後には落ち着きを取り戻せるとしています。

6秒間を耐える方法として有名なのが、心の中で「1、2、3……」と6まで数えるカウントバックです。より効果を高めるには、深呼吸をしながらカウントバックをするといいでしょう。

感情的になると、人間は呼吸が浅くなり、脳が酸欠になります。脳に酸素が行きわたらないと、興奮したり、感情が暴走しやすくなるのです。ですから、感情的になりそうだという時には、意識的に深く息を吸うといいでしょう。

2-2.感情に点数をつける

衝動的な感情は「この怒りは何点?」「この悲しみは何点?」と数値化すると、冷静さを取り戻すことができます。

アンガーマネジメントでは強い感情の代表である「怒り」を10段階に分けて数値化します。

1~3 「まあ、いいか」「どうでもいい」と流せる軽い怒り
4~6 モヤモヤ・イライラを感じる怒り
7~9 はっきりとした不満・憤りを感じる怒り
10 人生で最大級の怒り

通常の状態を0、人生で最大級の強い怒りを10点として考えます。この点数は主観的なもので、「これなら〇点」などの取り決めはありません。

感情を点数化する狙いは、「何点だろう?」と考えることで、反射的な言動を抑えられること。パニック状態や、暴言、失言、泣くなどの言動を防止します。「何点だろう?」と考えるだけで数秒かかりますし、その間に冷静さを取り戻すことができます。

2-3.ストップと心でつぶやく

アメリカの心理学者であるポール・G・ストルツが提唱したのがストップ法と呼ばれるものです。自分自身に物理的な刺激を与えて、思考を切り替える方法です。

「ストップ」と心の中で強くつぶやくことで、脳に「これはもう考えなくていい」と認識させます。瞬間的に思考が止まるので、「羨ましい」「ずるい」などのネガティブな感情を切り替えたい時にも有効です。とても簡単ですし、TPOを気にせず使えるのでおすすめです。

ストップ法は心の中でつぶやく以外にも、以下の方法でも可能です。

【ストップ法の例】
「ストップ!」と声に出して言う、自分の体に刺激を与える(軽く叩く、つねる)、冷たい水を飲む

3.感情コントロールができない6つの原因

感情コントロールができない6つの原因

衝動的な感情のコントロール方法が分かったら、それ以外の感情の対処法を学びましょう。

「ずっとイライラしている」「モヤモヤした気持ちが続く」などの感情は、その場しのぎのテクニックでは対処できず、原因を見つけて適切に対処する必要があります。

感情がコントロールできない主な原因は以下の6つです。

感情をコントロールできない原因
①パーソナリティを理解していない
②ストレスがたまっている
③疲労がたまっている
④睡眠不足
⑤生活リズムの乱れ
⑥病気

ご自分がどれに当てはまるのかチェックしながら読み進めてくださいね。

3-1.パーソナリティを理解していない

自分のパーソナリティを理解していないと、他人の行動にイライラしやすくなります。
パーソナリティとは、個性、性格、考え方のことです。

人間は一人ひとりパーソナリティが違うのが当たり前ですが、その特徴や傾向をしっかり把握していないと、自分の認識を他者に求めてしまいます

パーソナリティ 他者への傾向
完璧主義 相手にも「完璧であること」を求める
時間に厳格 相手の「時間のルーズさ」を許せない
真面目 不真面目な言動を不快に感じる

大抵の人が目くじらを立てないことに対して、あなたはどうしても気になってしまう、許せないと感じるのはそのためです。

3-2.ストレスがたまっている

ストレスがたまると、気分が落ち着かず、イライラしたり、落ち込みやすくなったりしますよね。これはストレスが判断力だけでなく、理性にも影響を及ぼしているからです。

ストレスがたまると、気持ちのアップダウンが大きく、本来なら気にしない些細なことに対して敏感になったり、過剰に反応してしまうことがあります。

3-3.疲労がたまっている

精神的なストレスだけでなく、肉体が疲れていると思考が正常に働きません。

体がクタクタで早く休みたいのに、何らかの理由で休めないとなると、心身の欲求が一致せず心が不安定になります。

疲れてくると、突然攻撃的になったり、涙もろくなったりするのは、「放っておいて欲しい」「休ませてほしい」というSOSでもあるのです。

3-4.睡眠不足

睡眠は人間が生きるために欠かせない基本的な欲求です。近年の研究では、睡眠不足になると、喜怒哀楽の暴走を抑えにくいことが明らかになっています。

睡眠不足が続くと、ちょっとしたことで感情的になったり、無気力状態になったりと感情の起伏が極端になる場合も。しっかり眠っているつもりでも、睡眠の質が悪く知らない間に睡眠不足に陥っていることも考えられます。

3-5.生活リズムの乱れ

生活リズムが乱れると感情のコントロールができなくなります。

なぜなら体内時計のリズムが狂うと、脳は危険を察知して防衛本能を働かせるからです。
脳が防衛モードに入ると、わずかな変化にも過剰に反応しやすくなり、感情が落ち着きません。

生活リズムの乱れに該当するのは以下のとおりです。

  • 運動不足
  • 食生活の乱れ
  • 昼夜逆転で生活する
  • 不規則な生活

また、昼間の運動量が少ないと、脳内の神経活動のバランスを保つ「セロトニン」の分泌が減少し、感情コントロールが困難になるとされています。

3-6.病気

感情のコントロールができなくなる病気もあります。ただしすべてのケースに当てはまるわけではありません。

感情のコントロールができなくなると考えられている病気は以下のとおりです。

病名 主な症状(一例)
高次機能障害
  • 記憶力が低下する
  • 人格が変わってしまう
  • 言葉が出にくくなる
双極性障害
  • 気分がハイである
  • 何をしても楽しくない
  • 不眠または過眠気味である
  • 1ヶ月に5%以上の体重の増減がある など
ADHD(注意欠如・多動症)
  • 落ち着きがない
  • 気分にムラがある
  • 集中力がない   など
PMDD(月経前不快気分障害)
  • 生理が始める1週間前から調子が悪い
  • 乳房の腫れや筋肉痛などがある・倦怠感がある

いずれも外見からは分かりにくいため、言動から誤解を招くことが多いようです。

それぞれの病気の主な症状をあげましたが、あくまで上記は一例にすぎません。感情のコントロールが著しく低下したり、病気かもしれないと感じたりしたら、医療機関の受診をおすすめします。

4.【原因別】感情をコントロールするための対処法

【原因別】感情をコントロールするための対処法

感情をコントロールできない原因が分かったら、それぞれの対処法を学んでいきましょう。ここでは原因別に解説していきます。

4-1.【パーソナリティを理解していない場合】自己理解を深める

パーソナリティを理解していない場合は、自己理解を深めることが重要です。「どんな時に感情的になるか」「何を重視しているか」などを書き出していくと、性格の傾向やこだわりが見えてきます。

<自己理解を深める方法>
自分について書き出す
  • 性格
  • ポリシー
  • 重視していること
  • 許せないこと
  • 好きなこと
  • 嫌いなこと
自分の感情について書き出す
  • 感情的になるのはどんな時?
  • 最も怒りを感じたこと
  • 最も悲しみを感じたこと
  • 最も嬉しかったこと
  • 最も楽しかったこと

完璧主義の人は少しでも待たされると「時間にルーズなのは失礼」と不機嫌になりやすいもの。ですが、完璧主義ではない人にとっては、少しくらいの遅刻ならほとんど気にしないでしょう。

完璧主義の人が不機嫌になるのは「自分のルールを破る人が許せない」からです。

この時に「自分は完璧主義すぎるけど、みんなは違うみたいだ」と認識することができれば、感情的にならずに他人の行動に対して冷静に受け止めることができます。

4-2.【ストレスがたまっている場合】適度にストレスを解消する

ストレスが原因なら、適度にストレスを解消するように努めましょう。
感情をコントロールするためには、あなたがリラックスしていることが大事です。

ストレスの原因が明らかなら、ストレス自体をゼロにするのが理想ではありますが、人間関係や仕事の悩みだと、なかなか難しいですよね。

ストレスがたまったら、とにかく自分がリラックスできること、楽しめること、没頭できることに取り組みましょう。映画を観る、本やマンガを読む、友人とおしゃべりをする、好きなデザートを食べるなど何でもOKです。

中には本人が「ストレスが解消できる」思っていても、脳にとっては悪影響を及ぼす「間違ったストレス解消方法」もあります。以下に3つはストレス解消にはなりませんので、気をつけましょう。

これはNG!やってはいけないストレス解消法3つ
飲酒 たまに飲むのはOK。しかしストレス発散のために毎日飲んだり、大量に飲酒するのは逆効果。
悪口を言う おしゃべりはストレス解消になるが、ネガティブな話題はNG。ネガティブな感情は引きずりやすく、ストレスにつながる。
ギャンブルや買い物 たまにならOKだが、ストレス発散の手段となって常習化すると依存症の危険がある。

4-3.【疲労がたまっている】徹底的に休む

疲労がたまったら、徹底的に休みましょう。体を回復させると、自己防衛の感情も少しずつ収まっていきます。軽い疲れであれば、温かいお風呂に入ったり、好きな音楽を聴いたりして、のんびり過ごすといいでしょう。

それでも楽にならない場合は、思い切って「何もしない日」を過ごします。ひたすら眠り、本やテレビ、インターネットから距離を置いて静かに過ごすこと。2~3日集中して休むことができれば、コンディションを整えられるはずです。

4-4.【睡眠不足】睡眠をしっかりとる

睡眠不足の場合は、睡眠の見直しが必要です。
睡眠時間の確保だけでなく、毎日決まった時間に起床・就寝するように心がけましょう。

また、睡眠の質が悪いと、どれだけ長く眠っていても脳が休まらず、睡眠不足に陥ります

睡眠の質を上げるためには、以下のポイントをチェックし、必要があれば改善しましょう。

睡眠の質のチェックポイント
  • 寝具は清潔か
  • 枕の高さや硬さはちょうど良いか
  • 睡眠時に明かりが射し込まないか
  • 寒すぎたり、暑すぎたりしないか
  • 室内が乾燥していないか

4-5.【生活リズムの乱れ】生活リズムを整える

生活リズムが乱れているなら、すぐに生活リズムを整えましょう。

起床、就寝、食事の時間が大体いつも同じになるような生活が理想です。起床後は窓を開けて朝の日差しと空気に触れることで、体調と感情面に良い影響を与えます。

しかし中には「勤務シフトによって就寝時間が異なる」という人もいますよね。ライフスタイルによっては、早寝早起きの生活が難しいこともあるでしょう。この場合は、自分にとっての生活パターンを作るのがおすすめです。

4-6.【病気】必要な治療を受ける

専門医を受診し、病気であると認められたら、治療をスタートさせましょう。
病気の種類によっては、服薬で症状が改善するケースもあります。

感情のコントロールも大切ですが、まずは病気を治す・良くなるのが先決です。

5.感情に振り回されないために毎日できるトレーニング5つ

感情に振り回されないために毎日できるトレーニング5つ

毎日を機嫌よく過ごすには、感情に振り回されないようにしなくてはいけません。何だか難しいような気がしますが、実は簡単。知らず知らずのうちにやっている習慣を変えるだけで、理想の自分に近づけます。ここでは、毎日できる5つのトレーニングを紹介します。

5-1.ネガティブ思考をやめる

物事をネガティブにとらえる癖があると、些細なことで感情的になります。ネガティブな思考はマイナス感情を増大させるからです。

たとえば「絶対に失敗は許されない」「失敗は悪いこと」という思考だと、新しいことに挑戦する時にナーバスになりますよね。しかし、「失敗しても問題ない」「また挑戦しよう」とポジティブに考えられると、気負いがなくなります。

無理やりポジティブ思考になる必要はありません。大切なのはネガティブな考えに感情を支配されないことです。日常生活において「ネガティブ思考になりそう」と感じた時は、次の3つを意識するといいでしょう。

ネガティブ思考を断ち切る方法
完璧を目指さない 70点で合格だと考える
「過去は変えられない」と割り切る 「過去に起きたことは仕方ない」として、「これからどうする?」を考える
物事を白と黒だけで判断しない 物事は白と黒以外にもグレー(そのほかの選択肢)もあると考える
「私は大丈夫」とつぶやく ネガティブになりそうになったら「私は大丈夫」と言い聞かせる

5-2.SNSに深くかかわらない

SNSに深くかかわると、ストレスをためる原因になります。

友人の近況や新しい情報が手に入るなど、心弾む面もありますが、いつもSNSのことばかり考えていると、心に負担がかかります。

SNSでのストレスを減らすには、自分なりの利用ルールを設けるのが一番です。

利用時間や面識のある人にしか返信しないなど、あなたがストレスなく楽しんで利用できるのは、どこまでか決めるといいでしょう。

SNS利用のマイルールを決める
①SNSの利用目的を再確認する (例)LINE:友人や家族、知人との連絡
(例)Twitter:好きな芸能人やアーティストなどの情報収集
②利用するSNSを厳選する (例)LINE、Twitter、Instagram
③利用時間を決める (例)往復の通勤時間のみ
④コメントや返信する範囲を決める (例)友人や付き合いのある知人まで
⑤その他 (例)ネガティブな気持ちの時は利用しない

5-3.「ありがとう」と言う

「ありがとう」は魔法の言葉です。他者だけでなく、自分自身にも効力があります。

ありがとうと言われてイヤな気持ちになる人はほとんどいないからです。日頃から、助けてもらったとき、うれしいときは積極的に「ありがとう」と伝えましょう。売り言葉に買い言葉のようなトラブルが起きにくく、無駄なストレスを避けることができます。

同僚「代わりに請求書を作っておいたよ」
自分「すみません助かります」⇒申し訳ない感情が強い
同僚「代わりに請求書を作っておいたよ」
自分「ありがとうございます助かります」⇒こちらの方が感謝が伝わりやすい
子供「お母さん、おもちゃを片づけ終わったよ」
母親「自分のおもちゃだから当たり前でしょう
子供「(当たり前かもしれないけど……モヤモヤする)」⇒ネガティブな感情になりやすい
子供「お母さん、おもちゃを片づけ終わったよ」
母親「ありがとう。キレイになって嬉しいね」
子供「(本当だ。片付けるとキレイになって気持ちいい!)」⇒ポジティブな感情になりやすい

「ありがとう」を口にすることで「私は人に親切にしてもらった」「私は人に感謝を伝えられる」の2つが再認識でき、感情を落ち着ける効果も期待できます。

そのほかの「ありがとう」が使える場面
  • エレベーターのボタンを押してもらった時
  • 落とし物を拾ってもらった時
  • お土産をもらった時
  • 相手があなたの期待する行動をしてくれた時

5-4.感情を言語化する

怒りや悲しみなどの強い感情が出たときは、忘れないうちに紙に書き出しましょう。感情を言語化することで、自分の現状を客観的に整理することができます。

今自分はどのような気持ちなのか、何が起こったのかを、ひとつひとつ書いていくうちに、自然と気持ちが落ち着いてくるはずです。書きながら対処法が浮かぶこともありますし、気持ちが晴れやかになることも。心の中であれこれ考えるより、手を動かすと冷静さを取り戻せます。

5-5.自分を褒める

毎日自分を褒めて励ます習慣をつけましょう。人間はポジティブに肯定されると、実際にそうであると思い込む傾向があるからです。

褒める内容は嘘以外であれば何でもOK。ポイントは事実と願望をセットにすることです。

(例)
「朝、目覚まし時計より早く起きられたから、今日も一日いいことがありそう」
「今日も仕事を頑張ったから、きっといつか理想のポジションにつける」

いつでも機嫌よく過ごしたいなら「今日は天気がいい。とても幸せ」でもいいでしょう。

自分を褒めて励ます習慣があると、自信が生まれやすいもの。モチベーションを上げるためにも毎日実践していきましょう。

6.今の現状を大きく変えるために「感情の本質」を理解しよう

今の現状を大きく変えるために「感情の本質」を理解しよう

これまで感情コントロールのテクニック方法についてお話してきました。
感情が暴走しそうな時やパニックになりそうな時の対処法が、お分かりいただけたかと思います。

ですが「感情に振り回されたくない」「穏やかな心で生活したい」と願い、現状を大きく変えるためには感情の本質を理解する必要があります。感情の「本当の目的」を理解しなければ、どうしても感情に翻弄されてしまうからです。

感情の目的を理解すると、ネガティブな感情にも意味があることが分かり、「自分を守るための大事な感情」と受け入れることができるでしょう。

ここでは「感情を味方につける」アドラー心理学の考えをベースに解説していきます。

6-1.感情に「支配力」はない

アドラー心理学では、感情に支配力はないと考えます。なぜなら、人間は感情を目的によって使い分けられるからです。

「怒り」と「哀しさ」の感情を例に考えていきましょう。

部下に対して激怒している時に、来客があった場合
どうする? にこやかに来客に対応する
なぜ? 客は「怒りの対象」ではないから
感情に支配力があるなら? 客に対しても怒りをぶつけたり、不躾な態度を取ったりする
恋人とケンカして泣いている時に、上司から電話が来た場合
どうする? いつものような態度で電話に出る
なぜ? 上司は「哀しさ/怒りの対象」ではないから
感情に支配力があるなら? 泣きながら電話に出る

もし感情に支配力があるなら、怒りや哀しさといった強い感情は簡単に消えることはないでしょう。

上記の例のように、対象によって感情を使い分けられるのは「感情に支配力がない」証です

さらにアドラー心理学では「感情は目的を達成するための手段」ととらえています。次項で詳しくお話していきます。

6-2.感情は目的を達成するための手段

アドラー心理学では「すべての感情には目的がある」と考えます。感情は単独で存在するのではなく、「何らかの目的」を達成するための手段という考え方です。

感情の中で最もコントロールが難しい「怒りの感情」の目的は以下の4つです。

▼怒りの感情の4つの目的

①支配
  • 相手を自分の思い通りにしたい
②主導権争いで優位に立つこと
  • 自分が主導権を握りたい
③権利擁護
  • 自分の権利や立場を守りたい
④正義感の発揮
  • 自分の正義(信念)を守りたい
  • 自分の正義(信念)を相手にも破られたくない

怒りの感情は「怒りそのもの」で成り立っているわけではありません。怒りの感情は、何らかの目的を達成するために「不愉快なこと」「許せないこと」がきっかけで表れます

怒りの感情は、何らかの目的を達成するために「不愉快なこと」「許せないこと」がきっかけで表れる

同僚のささいなミスが許せないのは、あなたが「仕事は完璧にやるべき」という自分の信念を相手にも守らせたいからかもしれません。

また、片づけをしない子供に対して感情のままに怒るのは、「相手を自分の思うように動かしたい」という目的が達成できないからと考えられます。

6-3.怒りは二次感情である

感情の中で最もコントロールが難しい怒りは「二次感情」で、その根底に「一次感情」があるとされています。一次感情とは、傷つき、落胆、哀しみ、心配、寂しさ、不安などです。

二次感情である怒りが表出するスピードが早いため、「二次感情が一次感情に変わってしまう」ケースが多く見られます。いくつか例を出して見ていきましょう。

①心配が怒りに変わった例

門限を一時間以上過ぎて子供が帰ってきた時の母親の発言です。

母親「遅い!もう門限をとっくに過ぎているわよ!どうして連絡しないの!」

子供の帰宅を待つ間、母親は『事故に遭ったのでは?』『どうして連絡がないの?』など、ずっと心配していました。ようやく帰宅した本人を前に安堵したと同時に心配が怒りに変わりました

②哀しみが怒りに変わった例

Aさんは仲の良いママ友Bさんをランチに誘ったものの、「予定があるから」と断られました。しかしAさんはSNSでBさんが別のママ友グループとランチをしていたことを知ります。

Aさんは『あのグループには私も知っているママがたくさんいるのだから声をかけてくれてもいいのに』と、声をかけてもらえなかった寂しさを感じます。と同時に、寂しさは『なんで私を優先しないの?仲間に入れないの?』と怒りに変わりました

③落胆が怒りに変わった例

恋人に好みではない洋服をプレゼントされた女性は、顔を曇らせました。

『今まで一緒にいたのに、どうして私の好みを知らないの?』という落胆は、すぐに『私を全然理解していない』という怒りになりました。

6-4.感情の目的が分かれば、問題を最短で解決できる

基本的に感情は「目に見えること」しか相手に伝えられません。

◎喜びの感情⇒「嬉しいのだな」
◎怒りの感情⇒「怒っているのだな」

そのため、あなたが怒りの感情の目的に気づけず、感情をそのまま相手にぶつけても、「すごく怒っている」ことしか伝わりません。本当の目的が達成されないので、あなたはいつまでも怒りの感情を持ち続けることになります。

しかし感情の目的が分かると「どうすれば目的を達成できるか」が明確になるので、問題を最短で解決できるようになります。

感情の目的が分かれば問題を最短で解決できる

「子供に勉強をさせること」が目的の場合を考えてみましょう。

上のイラストのように怒りの感情をそのままぶつけても、子供には恐怖しか伝わりません。

一方で下のイラストのように「目的を達成するためにはどうするのが良いか」を考えて行動すると、子供は、「頑張ろう」と前向きに受け止めるでしょう。

下のイラストの子供は「勉強を終わらせるとゲームができる」ため、これからも勉強する可能性が高くなります。しかし恐怖で勉強させた場合は、子供が前向きに勉強する仕組みがないため、この先も母親が激怒することが考えられます。また、感情の目的が達成されていないので、同じ問題が起こるたびに怒りが出てくるでしょう。

6-5.大切なのは「心の声を聞く」こと

先ほどお話したように、すべての感情の奥には「本当の目的」があります。本当の目的を知るためには、目に見える感情にとらわれるのではなく、心の声を聞くことが重要です。

特にネガティブな感情は、あなたを守るためのSOSが目的となっていることが多いです。不安には「リスクに備える」、嫌悪は「危険から遠ざかる」目的があります。

怒りや悲しみといったネガティブな感情をマイナスにとらえる人は多いですが、その目的に目を向けると「とても重要な感情」であることに気づけるでしょう。

ネガティブな感情を持った時には、「なぜそう感じるのだろう?」と自分の心に問いかけると、本当の目的が見えてきます。本当の気持ちに気づけたら「自分が何をすればいいのか」が分かり、行動できるようになります。

心の声を聞くのに有効な方法として、マインドフルネスやカウンセリングがあります。この2つについては7章で解説していきます。

6-6.ネガティブな感情を味方につけると生きやすくなる

人間の感情はすべて絡み合い、連動しています。そのため一部の感情を抑えつけたり、感じなくしたりすることはできません。

このことを理解せずにネガティブな感情を抑え込み続けたり、悲しみを我慢し続けたりすると、感受性自体が麻痺してとても危険です。喜びや楽しさなどの、ポジティブな感情も感じにくくなってしまいます。

ですから、ネガティブな感情に対しては「嫌だ」「なくしたい」ととらえるのではなく、危険やリスクを知らせてくれる味方だと受け入れましょう。ネガティブな感情の目的を知ることで、あなたは今よりもずっと生きやすくなるはずです。

7.心の声を聞くのに役立つ2つの方法

心の声を聞くのに役立つ2つの方法

感情コントロールに欠かせない「自分の心の声を聞く」のに役立つのが、マインドフルネスとカウンセリングです。

自分の心の声が聞けるようになると、感情に振り回されることなく、日々を穏やかに生きられます。自分らしく、もっと楽に生きるにはどうすればいいのかの答えは、ほかでもない「あなた自身の中」にあるのです。次項より、マインドフルネスとカウンセリングについて簡単に解説していきます。

7-1.マインドフルネス

マインドフルネスとは、「今この瞬間」に集中する人生哲学です。仕事のパフォーマンスにも影響があるとして、マインドフルネスは世界中のトップ企業で採用されています。

マインドフルネスは今に意識を集中させることで、過去や未来にとらわれなくなり、ストレスを感じにくいメンタルを育みます

過去や未来について考えるとき、脳は大量のエネルギーを使います。脳疲労がたまると、どうしても機能低下を招きますし、ネガティブな感情が生まれるリスクも高まるのです。

マインドフルネスは心を穏やかにするだけでなく、ストレスが原因で起こる不調の改善にも効果があります。感情コントロールも楽にできるようになるので、効果を日常生活で実感できるでしょう。

7-2.カウンセリング

カウンセリングは、自分の心を見つめなおす最良の取り組みです。プロであるカウンセラーに話をすることで、見えてくる部分がたくさんあります。

自分の本当の願望や性格は、ひとりでは気づきにくいものです。自分を理解するためには、正しく導いてくれる他者の存在が必要なこともあります。

自分の気持ちが理解できると、心はとても安定します。やるべきこと、やらなくてよいことも明確になるので、今よりもずっと楽に生きられるでしょう。

まとめ

感情は完璧にコントロールすることはできません。しかし、自分が感情的になる原因を知り、適切に対処することができれば、ある程度コントロールできます。

最後に、この記事のおさらいをしましょう。

今すぐ強い怒りや悲しみなどの感情をコントロールしたい時は次の3つが効果的です。
◎6秒だけ耐える
◎感情に点数をつける
◎ストップと心の中でつぶやく

感情コントロールができない原因と対処法は次のとおりです。

原因 対処法
パーソナリティを理解していない 自己理解を深める
ストレスがたまっている 適度にストレスを解消する
疲労がたまっている 徹底的に休む
睡眠不足 睡眠をしっかりとる
生活リズムの乱れ 生活リズムを整える
病気 必要な治療を受ける

感情に振り回されないために毎日できるトレーニングは次の5つです。
◎ネガティブ思考をやめる
◎SNSに深くかかわらない
◎「ありがとう」と言う
◎感情を言語化する
◎自分をほめる

心の声を聞くのに役立つのは次の2つです。
◎マインドフルネス
◎カウンセリング

毎日を自分らしく、感情に振り回されずに生きるためには、感情の本質を理解することが大切です。感情には目的がありますから、強い感情が出た時ほど「なぜ?」と自問する癖をつけると、自分の本当の気持ちに気づきやすくなります。

穏やかで安定したメンタルを手に入れるためにも、ぜひご自分の心の声を聞く習慣を身に付けてくださいね。